ESG投資とパフォーマンス 湯山智教
ESGと受託者責任
1)伝統的とらえかた
ESGがフィナンシャルリターンを生み出さない場合は、受託者責任に反する。ERISA(従業員退職所得保障法)の解釈。
2)ESG配慮義務としての受託者責任
長期的サステイナブルな社会実現のため、機関投資家も考慮べきであり、ESG要素を考慮しないことの方が受託者責任に反する。
1)は、投資リターンを犠牲にすることは許されないという主張、1994年以来つづいた。オバマ政権で2015年に経済的利益を前提としてESGをうけいれたが、トランプ政権で再度、過度なESG重視や経済的リターンの犠牲を禁止した(2018)。
2)は日本のスチュアードシップコードや、ESG統合投資(インテグレーション)が該当する。法的拘束力はないが、ソフトローとしての義務。
ただし、受益者の利益のなかに、経済的利益も含めてよいとまではいっていない。
経済的利益を前提としたESG活動がもとめられる。
ESG要素を投資分析と意志決定プロセスに組み込む。
投資回避(ダイベストメント)は分散投資効果が低下するとされ、求められてはいない。
スチュアードシップコード
投資において当該企業の状況を的確に把握すべき、とする項目は、リスク、収益機会(社会、環境問題に関するものを含む)とされ、ガバナンスとともに、ESGすべてが把握すべき項目に含まれた。
20年3月のコード改定時には、建設的対話を通じてリターン拡大を図る、とある。
サステナビリティをどう考慮するか検討した上で、当該方針において明確に示すべき。と指摘。
投資リターンの拡大を目的にしているので、一律に ESGの考慮をもとめるものではない。
ベータの向上
市場全体のリターン底上げをはかるためエンゲージメントを通じて働きかけを行う。
GPIFのようなユニバーサルオーナーにとっては有効な方法といえる。
キャピタルコンストレイントとエージェンシーコスト
優れたCSR活動を行う企業は透明性の伴う情報の非対象性が低下、ステークホルダーに対するエンゲージメントを通じたエージェンシーコストの低下、によって、資金制約の低下(資金アクセスの改善)につながる。
グリーンウォッシュ、ESG wash
懸念。過度な開示
パフォーマンスとESGの相関
多くの研究がみられるが有意な相関はみられない。対象地域、期間、使用するスコア、分析手法の違い、のため。
マイナスの相関もみられてはいない。