男子の本懐 城山三郎
金解禁:
金の輸出禁止措置を解除すること。
もともと世界各国は、金本位制をとり、金の自由な動きを認めていたが、第一次大戦で経済混乱に陥り、金を自国内に温存しようとして輸出禁止を行った。
日本も1917年、寺内内閣で金の輸出を禁止。
非常事態における非常手段だった。
金本位制の下では、紙幣は兌換券として機能する。各国の金貨の金含有量によって交換比率も法定化されている。
輸出が増えれば、金が流入し、これに比例して自動的に通貨が増発される。
すると国内物価が高騰し、輸出が伸びなくなり、輸入が増えて輸出入がバランスする。
輸入が増えれば、金が流出し、中央銀行は紙幣の発行を減らすことになるのでデフレが起き、物価が下がる。価格の国際競争力がでて輸出が伸びる。
国内物価と国際物価を連動させるビルトインスタビライザー。
1923年には金の解禁が始まる。多くの国は金本位制へ戻った。残ったのは日本とスペインだけだった。
通貨が不安定になり乱高下し、為替投機化が暗躍。為替差損をおそれて経済活動も縮小する。これを解決させるため金本位制へ戻る必要があった。
もうひとつの狙いは、軍部の膨張の抑制。
軍部の拡張主義が続き、軍事費を増大させようとしていた。金本位制であれば、通貨をむやみに発行することはできないので自動的にブレーキがかかる。
井上らは、緊縮財政を行い、円の価値をあげ(法定レートにもどし)たうえで金本位制への復帰をめざしたが、緊縮ー不況をもたらす。