自由と秩序 猪木武徳

自由の思想が本来的にもつ問題が、二極化、大量失業、その反動の社会主義経済、歴史的には戦争などを生じさせた背景にある。
20世紀、多くの国で、民主制と、市場経済システムを通じて、自由と平等を追い求めたが、本来的に抱え持つ問題が顕在化した。

リベラルデモクラシーの存立にとって不可欠な条件は、意見をことにするものが共存する知恵をもっているかどうかということ。
自分とことなる意見を尊重し、それと共存するという矛盾に満ちたリベラルデモクラシーの本旨は、もともと自然にはんするものだった。だからその定着と維持は、意識的努力が不可欠となる。
Agree to disagree: 意見が一致いないことに同意する、敵と共存する、という矛盾に満ちた精神的態度を表現したもの。
共存への意志を示す必要のある民主制では、少数者を尊重するという決意を極端にまで発揮した寛容の政治思想。

民主制は、利己心の無制約な発言、私的生活への没頭、公的な事柄への無関心に支配されやすい。この行き過ぎにブレーキがかからな限り、民主制はよい社会をつくれない。このことは、市場経済についてもそのままあてはまる。
トクヴィルは、アメリカの民主政は、多数の横暴によって公共の利益が損なわれることを防ぐためのシステムが用意されているという、地方自治の強化、陪審員制度、政治結社、宗教への関心など。